みんな、青いうま、って、どう思う?
じゃあ、黄色いうしは? 水玉もようのろばは?
へん!っていう声が聞こえてきそうだけど、この絵本は「まちがった色? 絵をかくときに、そんなものはないんだよ」と子どもたちに伝えようと、エリック・カール(『はらぺこあおむし』の作者)がつくった本なんです。
ページをめくると、絵筆をもつ男の子が描くのは、画面いっぱいの青いうま、赤いわに。
黄色いうしや、ピンクのうさぎ、そして、うぅぅぅんとみごとな、緑のライオン!
それはもう、かっこよくのびのびしてカラフルで、最高にすばらしい動物たちばかり。
実は、この絵本の誕生にはこんなエピソードがあります。エリック・カールが子どもだったころ、住んでいたドイツでは、ナチス政権が人々の生活をコントロールしていました。
ある日、カール少年が自転車に乗って美術の先生の家にいくと、いつもカールの絵をほめてくれる先生が、こっそり、当時政権に「堕落した美術」として見ることを禁止されていたフランツ・マルクの絵を、見せてくれます。
マルクは1880年生まれ、第一次世界大戦で亡くなるまで、青いうまや黄色いうしなどカラフルな動物たちを描き、色にひそんでいる意味までも伝えようとした芸術家でした。
カール少年は最初ひどくびっくりしましたが、のちにマルクの絵から多大な影響を受けることになります。
そして、生まれたのが、今回の新作『えを かく かく かく』。「この『えを かく かく かく』のふしぎな色の動物たちは、あの日からずっと、ぼくといっしょに生きてきてくれたんだ」とカールは語ります。
色彩の魔術師といわれる作者が少年時代に、フランツ・マルクの絵を見て感動した、実体験をもとにつくられた本。
本をひらくと・・・
“さあ、絵をかこう。どんな色でかくか、じぶんが思うように、のぞむように、のびのびとかくことはとっても大事。じゆうに、いちばんぴったりだと思う色をさがして、絵をかいてごらん!“
アーサー・ビナードさんの訳はやわらかく、そんな作者のやさしい声がほんとうに聞こえてきそうです。
きみは、なにいろから、かきはじめるかな?
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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まちがった色なんてない。自由な色でかいていい
絵筆をもった男の子がかくのは……とっても青い馬。赤いわにや黄色い牛などカラフルな動物たちがあらわれる、迫力いっぱいの絵本。
この絵本は作者エリック・カールが、ドイツ表現主義の画家フランツ・マルクの絵に触発されてかいた絵本です。
マルクは、青い馬、黄色い牛など、動物たちを大胆な色づかいでえがいた画家でしたが、第一次世界大戦で亡くなってしまいます。
カールは、ドイツにいた12歳のとき、美術の先生からマルクの絵を見せてもらい、その自由でのびのびした絵に影響を受けました。
迫力満点の色あざやかな本書には、絵をかく子どもたちへのカールの思いがこめられています。
――「まちがった色なんてない」「線からはみだしたっていい」「自由にかいて楽しもう!」
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