くたびれたおひさまが、空から丘へ降りてくる。
すると……月がのぼった!
静かな暗やみの世界に満月が浮かぶと、
ひんやりとした庭に月明かりが差し込んでくる。
池ではきんぎょがぎんぎょと遊び、年寄りカエルが鳴きはじめる。
月の光に誘われてやってきたのは、はだしの子どもたち!
風に吹かれて髪がボサボサになるのもかまわず、みんな踊りだす。
夜の木に登り、歌をつくり、こわーい話をする。
草のうえでとんぼがえりだってする。
どんどんふくらむつきふうせん。
ジャンプすればさわれるかな。
ぼくたちはムーン・ジャンパーだ!
子どもたちは、満月に照らされた幻想的な夜の庭で、歌い、踊り、遊びます。
その夜の情景の美しさといったら……。
見ているだけで、冷たい空気、足の裏にささる芝生、ほほをなでる心地よい風を感じます。
『木はいいなあ』の作者ジャニス・メイ・ユードリーの詩的な文章に、他の作品とは少し趣の違う、繊細でうっとりするような色彩で絵を描いているのは『かいじゅうたちのいるところ』のモーリス・センダック。
生き生きとした子どもたちの言葉、躍動する身体から、彼らの喜びが伝わってきます。
子どもたちはきっと、読むたびにこの特別な夜の時間を体験していくのでしょう。
1960年コルデコット・オナー賞受賞作品です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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センダックが描く幻想的な夜の情景
満月にてらされた夜の庭で、歌い、踊り、遊ぶ子どもたち。『木はいいなあ』の作者ユードリーの詩的な文章に、センダックが描いた、幻想的な月明かりにうかびあがる夜の情景がすばらしい絵本。コルデコット・オナー賞受賞作。 モーリス・センダックは、ジャニス・メイ・ユードリーの『ムーン・ジャンパー』に深く心を動かされたに違いない。この絵本のテキストに、彼の作品のなかでも、とりわけ美しい絵を描いている。〈ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン新聞〉評
この絵を見た子どもたちは、ただちにその中にはいりこんで、はだしの足の裏の芝生や、髪をなぶり、ほほをひやす、心地よい風を感じることができるだろう。そして、月明かりに照らされた夏の夜、とんだりはねたりしながら、ただ生きているということに、うきうきするような喜びを感じるにちがいない。多くの大人たちも、この美しい絵本によって、遠い日の喜びをあざやかに呼びさまされることだろう。 児童書批評誌〈ホーンブック〉評
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