表紙には、リレーのバトンを持って走る女の子。運動会でしょうか。タイトルが『しっぱいにかんぱい!』ですから、何か嫌な予感が…?
「おねえちゃんは、けさも牛乳をのんだだけでした。そのまんま口もきかずに自分の部屋へ、ひっこんでいってしまいました」という始まりの文から、予想通り?何かショックな出来事がおねえちゃんの身に起こったことがうかがえます。ゆうべから何も食べていない、というおねえちゃん、このおねえちゃんこと6年生の加奈は、前日の運動会のリレーで失敗をしてしまったのです。落ち込んだ加奈には、おとうさんやおかあさんの慰めの言葉も全く届きません。弟の達也は心配でおろおろするばかりです。そこに、おじいちゃんから1本の電話が入ります。おじいちゃんにお昼によばれて集まったのは、親戚のおじさん、おばさんと、いとこの洋とまなみ。ふとしたきっかけからみんなのしっぱい話が始まります。洋のしっぱい、まなみのしっぱい、弟達也のしっぱい、おばさんのしっぱい、そしておじさんのとんでもないしっぱい…。それぞれ大変な思いをしたけれど、今は笑いながら明るく語る姿を見て、加奈も自分のしっぱいを語り出すのでした。
大人になればしっぱいの1つや2つは当たり前。けれど子ども達にとっては初めて経験するショックな出来事でしょう。このお話は、そんな子ども達を励まし、勇気づけてくれる頼もしい存在です。
『しっぱいにかんぱい』は、「かんぱい!シリーズ」の1作目。シリーズには他にも「うそ」「ずるやすみ」「わすれんぼう」「けんか」「0てん」をテーマに現在6作品があり、そのどれもが子ども達が直面するであろう身近な問題を取りあげています。「かんぱい!シリーズ」を通して出てくる、子どもたちをさりげなくサポートする大人たちのように、子どもたちの近くにそっと置いておくようなさりげない手渡し方をしたい作品です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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