「はる」が目覚めれば、寒さはだんだん和らいで。
「ふゆ」のところへ行って交代します。
「あら いちねんぶりね はるが きたわ」
何か月かして、日が長くなる頃、今度は「なつ」がやって来る。そうして交代すれば、今度は季節が夏になるのです。
ある時、なつは言います。
「ようし あきが くるまで がんばるぞ」
あき?
はるは気が付きます。
そういえば、私はあきに会ったことがない。
いったいどんな子なのでしょう。
ふゆが言う「あき」と、なつが言う「あき」は全く違うから想像もつかない。
そうだ、手紙を書こう。
そこから始まるはるとあきの往復書簡、いい思いつきです。
顔も知らない、話したこともない相手。
あなただったら、どんなことを書くのでしょうね?
ふたりは少しずつ、自分のことを話します。
話しながら、相手のことを少しずつ知っていきます。
ふたりの想像の世界はどんどん広がります。
なんて素敵なやりとりでしょう。
満開の桜を知り、山も林も真っ赤になる紅葉を知り。
空の色は同じ青だと知り、音楽の流れる夜を知り。
でも、何度目かの手紙を預けながら、はるは思いもよらないことを言うのです……。
春夏秋冬、めぐる季節の中にこんな物語がかくれていたなんて! 春と秋、季節は違えど、確かに似ているところもあって。夏と冬との関係とはなんだか違う。惹かれあうふたりだけれど、知れば知るほど、本当に知りたいことに手が届かないような気もしてきて……。このもどかしさがたまらない。
切ないけれど、嬉しさが上回るふたりの可愛らしいやりとりを、優しさがにじみ出ているような美しい絵で存分に味わってくださいね。きっとみんな「はるとあき」のことが好きになってしまうはずです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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