「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(偕成社)の竹下文子さんと、
『ネコヅメのよる』(WAVE出版)の町田尚子さんがタッグを組んだネコ絵本。
その触れ込みだけで、期待感がグッと上がります。
表紙にはこちらをじっと見上げるキジトラ模様のネコ。
その表情は少し寂しげで不安げ。何かを一生懸命訴えているようにも見えます。
鼻と片耳にはケンカの跡。きっと野良猫なのでしょう。
靴屋のネコは「レオ」、本屋のネコは「げんた」、八百屋のネコは「チビ」。
町のネコにはみんな名前がついているのに、このネコには名前がありません。
お寺のネコ「じゅげむ」に「じぶんで つければ いいじゃない。じぶんの すきな なまえをさ」と言われて、町を歩きながら自分に合う名前を探しはじめます。
「かんばん」「やじるし」「くるま」「のらねこ」「へんなねこ」「あっちいけ!」
なかなか名前は見つかりません。
ベンチの下、空を見上げて、雨が止むのを待つネコ。
その心の中まで、雨音が響き渡ってきます。
すると「ねえ。おなか すいているの?」とネコに訪ねる優しい声。
その声を聴いて、ネコは自分が本当に求めていたことに気づきます。それは……。
空前のネコブームと言われる昨今。
スコティッシュフォールドやマンチカンなどの人気の猫種がいる反面、
絵本に登場するキジトラは、日本に一番多い模様のため、
里親などに出されても、あまり引き取り手がいないのだそうです。
名前を探して町中をさまようネコの姿を見ていると、
「名前のないネコ」が一匹でもいなくなり、どのネコにも名前がつき、
あたたかな家庭に迎えられるよう、作者お二人の願いが込められているようにも感じます。
絵本に登場する動物たちにはどれもモデルがいるそうで、見返しに全員大集合しています。
どのネコがどのページに登場したか、探してみるのもオススメです。
(木村春子 絵本ナビ編集部)
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八百屋や書店、パン屋、蕎麦屋、喫茶店などの飼い猫たちが、みんな持っている「名前」に憧れている、ひとりぼっちの猫。
ある日、お寺の猫に「自分で好きな名前をつければいいじゃない」と言われ、名前を探すことに。
名前のない猫が見つけた「ほんとうに欲しかったもの」とは?
愛猫家で猫が主人公の作品を多く発表している作家と、同じく愛猫家で猫の絵が人気の画家による猫愛に溢れた絵本。
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