フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ17巻は、上方落語の『犬の目』。
ドキドキしながらお医者さんの診察を受ける気持ち、みなさんも感じたことがありますよね。これは、目が痛くなって、目医者さんにかけこんだ男のドキドキのお話です。
男は、目医者さんから、目がくさりかけていると言われてびっくり!治療のために目をくりぬくと言われ、さらにびっくり!
そしてくりぬかれてしまった男の目へ、お医者さんの何だか怪しげな?治療がはじまります。目玉は、目を洗う液体につけて膨らんでしまったり、元のサイズに戻すために天日で干されたり。
男の不安がつのるうちに、助手から小声で、「先生、目が盗まれました」という報告が。なんと、となりの犬が食べてしまったと言うではありませんか! さあ、男の目はいったいどうなる?
落ち着きはらった目医者さんと、(言葉だけ聞いて)あわてふためく男の、絶妙なやりとりが笑いを誘います。内容は奇想天外の連続なのに、桂米平さんのクールで軽妙な語り口がいいですね。これぞ、落語という感じがします。
ちょっと聞くとグロテスクになりそうなお話ですが、いとうひろしさんによるイラストは明るく、ユーモラスで、落語絵本と思えないくらいモダンな雰囲気。落語そのもののように、聞き手の想像の余地を残した描き方をされているそうです。
どの場面も、人物の表情や構図が絶妙なので、じっくりお楽しみください。
(長安さほ 編集者・ライター)
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そんな、あほなことできますかいな、とあきれる人も、噺を聞くうちにアハハハと納得して笑ってしまうのが、
落語の見事なところ。テンポよく進むお医者さんと男の人のやり取りがおもしろく、なんともおかしな、
表情豊かな3人と一匹の姿に、ページをめくる手がとまりません。洗った目玉を食べてしまった犬の満足そうなこと。
落ち着いて次の手を打つお医者さんもさすがです。読み終わって表紙を見返した時、なんだか心がざわざわして
しまうのはなぜかしら?落語ってこんなにシュールでポップだったんだな。
大阪の実力派桂米平と絵本作家いとうひろし初の落語絵本。がっぷり四つに組んだ意欲作です。
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