しずかな夏の夕方、ぬいぐるみのゾウとライオンとキリンは家出をすることにしました。もといた動物園の売店に帰るのです。でも、庭で出会った屋根裏ネズミに持ち主の男の子が3匹がいなくなって大泣きしていると聞き…。いとおしく宝物のような絵童話。
●編集者コメント 家出するぬいぐるみたちの会話と行動が、今そこにいない男の子との過ごした時間の豊かさを想起させる。 すぐれた短編小説の趣もあり、幅広い年代におくりたい童話。
この男の子みたいに、大きな声で泣いたのは、もうずっと昔のことです。
一番わんわん泣いたのは、たしか小学生の頃。
大事にしまっていたお気に入りのシールが、いつの間にか妹に使われていたとき。
わんわん泣いて、悔しくて、やっちゃダメだと分かりながらも、
妹のおもちゃを放り投げてしまった時が最後だったような気がします。
自分で放り投げたくせに、そんな自分が嫌で、また大泣きして…。
今では妹との笑い話になっていますが、
あの時は色んな気持ちが混ぜこぜになって、しゃっくりが出るくらい泣いたなあ。
大人になると、どうしてか、なかなか泣けませんよね。
どんなに悲しくても悔しくても、ぐっと我慢して、
家族の前ですら平気なふりをしてしまいます。
だからこそ、男の子が泣きながら、「かえってきてよー!」と声を出す場面では、ボロッと涙が出てきました。
家出をしようと決心したどうぶつたちが、
泣いている男の子のことが どうしようもなく気になって
窓からそっと様子を覗く姿に、胸がぎゅっとなりました。
表情が変わらないはずのぬいぐるみの気持ちが、
酒井駒子さんの絵から ひしひしと伝わってきます。
帰ってきたぬいぐるみを男の子が抱きしめる場面では、
だれの表情も描かれていないのに、胸がいっぱいになります。
児童文学は、絵本に比べて読む機会がほとんど無かったのですが、
今まで見過ごしていたのが惜しいと思いました。
始まりからおしまいまで、
今村葦子さんの紡ぐ言葉に、すっかり心を掴まれてしまいました。
きっと何度でも読みたくなる、宝物のような一冊です。 (なーお00さん 30代・その他の方 )
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